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大学と企業の違い3選【企業研究者の視点で解説】

研究職に興味があるんだけど、大学の研究とどんな違いがあるの?

本記事では、このような疑問にお答えします。

こんな方に読んでほしい

  • 企業での研究に興味がある方

  • 企業研究者の働き方を知りたい方

  • 博士課程進学か就職か進路を迷っている方

食品メーカーで研究職として働くアルファです。ツイッターやっています。お問い合わせはこちらから。

目次

大学と企業の違いを解説

まずは私の研究者としてのキャリアです。

修士課程までの3年間は大学で研究

その後食品企業に研究職として入社し、基礎研究に数年従事

共同研究員として大学の研究室と他業種企業に数年派遣

こんなキャリアで、大学と企業で研究を経験してきました。
本記事ではこの経験をもとに、企業研究者の視点から大学と企業の違いを解説していきます。

大学と企業は研究の目的が違う

大学と企業の研究で最もわかりやすい違いは、その目的です。

大学での研究の目的は論文企業での研究の目的は利益
かなり大雑把ですが、この違いは大きいかと思います。

企業の研究目的を利益と書きましたが、具体的には、
製品・サービス>特許>論文、学会発表
この優先度であることが多いと感じています。

製品やサービスは利益に直結する場合が多く、特許には企業の利益を他社から守る性質があります。
また、特許権を売却して利益を得ることもありますね。

論文や学会での発表は、それ自体で利益を生み出すことは稀ですが、自社の技術力をPRする場として活用されることもあります。
ただし、規模が大きい企業ほど基礎研究にも力を入れている傾向が強く、すべての企業研究者が製品やサービスへの応用を目指した研究を行なっているわけでありません

食品企業でも食品以外の基礎研究を行なっている企業はたくさんあります。
このあたりは別記事でまとめますね。

一方で、大学での研究は論文を書くことを目指していることが多いと感じます。
学生時代は、いかにインパクトファクターの高い雑誌に掲載されるかが勝負だ!と考えていましたし、共同研究員として大学の研究室に派遣された際も、その傾向が強かったですね。

掲載論文数が大学教員の評価基準の一つになっていることも、その要因だと思います。

ただし、大学での研究でも工学部や医学部を代表するような応用研究に力を入れる学部では、製品化やサービス化、特許化を目指した研究は数多くあります。

大学と企業は拘束される時間が違う

同じ研究者でも働き方が違うなと感じます。

私が学生の頃は、土日関係なくほぼ毎日研究室にいました。
教授から強制されていたわけではなく、あまりにも実験や情報収集が下手で時間がかかっていただけですが…。
学生だけではなく、ポスドクや助教、准教授も土日深夜まで研究室にいましたね。

しかし、企業にきてからは土日はもちろん残業時間も管理されるようになり、時間をかけてゆっくり検討をしてみるというスタイルが取りにくいと感じます。

企業における一番のコストは人件費なので、これは当然です。

企業では拘束時間が短い、ここまではよく聞く話。
私が考える企業で働く大きなメリットは、裁量労働制にあると考えています。

裁量労働制(さいりょうろうどうせい)とは、日本の労働法制で採用されている労働者雇用者と結ぶ労働形態の一種。労働時間と成果・業績が必ずしも連動しない職種において適用され[1]、あらかじめ労使間で定めた時間分を労働時間とみなして賃金を払う形態である。

出典:wikipedia

多くの企業の研究所が取り入れている制度で、労働時間に対して賃金が支払われるのではなく、成果に対して賃金が支払われる制度です。

研究という仕事にとてもマッチしていると考えていて、


「今日は遅くまで実験しなければいけないから、明日の午前中はカフェで読書でもしよう」
「今日は保育園のお迎えに行かなければいけないから、早く帰宅して論文でも読むか」

という働き方が容易になります。

フレックスタイム制とは異なり、月の総労働時間も管理されていないので、ワークライフバランスが取りやすい制度だと考えています。
どれだけ働いても残業代が出ず、長時間労働の温床になるという意見もあるので、ここには注意が必要ですね。

大学と企業は一緒に仕事をする人が違う

企業研究者として働き始めたことで、関わる人の幅が広がりました。

他分野の研究者だけではなく、開発職やマーケティング職、企画職などの他職種の方と一緒のプロジェクトに関わることは日常茶飯事です。また、共同研究で大学の研究室と仕事をすることもあれば、法規対応で行政の担当者と連絡を取り合うこともあります。
その分、研究に割ける時間が減ってしまうこともありますが、いろんな人と関わりながら自分の研究を進めたいという方には企業での研究は向いていると言えます。

ただし、私は経験しませんでしたが、大学の研究室でも多くの企業や大学と共同研究を行なっているところはあります。
そして、共同研究という点では大学の方がハードルが低いようにも思います。企業では知的財産や法務など共同研究や共同開発におけるハードルが比較的高く、開始までにどうしても時間を要してしまいます。

大学と企業の共通点

ここまで企業と大学の違い3選を紹介してきました。
反対に、共通していることは何でしょうか。こちらも簡単に紹介します。

研究好きが集まっている

企業研究に向いている人の特徴TOP5でも紹介しましたが、大学でも企業でも研究好きが集まっています。

入社前は、「企業の研究なんてサイエンスじゃない」なんて意見を耳にしていたので気がかりでしたが、完全に杞憂でした。
大きな目的や働き方に違いはあれど、研究に向き合う姿勢には大きな違いはないと考えています。修士で入社しても、その後博士号を取得する社員が多くいるのもその証拠の一つですね。

そして、研究者は噂好きなのはどこでも同じです。

研究予算の取り方

研究費の出所は、大学では多くは科研費から、企業では利益からと違いはあります。
しかし、研究の目的は何で、どんな手法を使ってそれを明らかにし、目的が達成されたらどんなメリットがあるのかを示さなければ予算がおりないのは大学も企業も同じです。

まとめ

「大学での研究と企業での研究、どちらが良いですか?」

特に就活の時期によく聞かれる質問なのですが、何とも回答が難しい質問です。
質問頂いた方の人生を左右するかもしれないため、非常に慎重に答えるようにしています。

個人的には修士卒で企業に出てきてよかったと思うのですが、その方の置かれた環境や考え方、所属している研究室にかなり左右されます。正解はありません。

ただし、新しい環境に飛び込むことで得られる発見がたくさんあることも事実です。
本記事が皆さんの進路を決める参考になれば幸いです。

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