理系就活

【研究職志望向け】企業研究のやり方を解説

研究職を目指しているんだけど、企業研究のやり方を知りたい

本記事ではこのご質問にお答えします。

食品メーカーで研究職として働くアルファです。ツイッターやっています。お問い合わせはこちらから。

目次

企業研究とは?

企業研究の目的

企業研究の目的をマイナビではこのように定義しています。

企業の特徴を理解し、 自分との相性を見極め、 志望企業に出合い、 選考を突破することです。

マイナビ新卒紹介

ここで一番大切なのが選考を突破すること、さらに言えば内定を獲得することです。

内定を獲得するためには、「御社に入りたい」という熱意とその根拠がとても重要になってきます。
根拠を示すには、会社が求める能力ややってほしい仕事と、自分のやりたいことやれることがいかにマッチしているかを明確にする必要があります。

この会社が求める能力ややってほしい仕事を洗い出す作業が企業研究です。

一方で、自分との相性を見極めるのは少し難しいように思います。
就活生が得られる情報は本当に限られていて、まさに氷山の一角です。
社風や人間関係など、自分と企業の相性に直結する情報はなかなか入手できません。

そのような情報を少しでも手に入れたいのであれば、OBOG訪問で現役社員に直接聞くのが最適だと考えます。
OBOG訪問については別記事を用意しますので、少々お待ちください。

もう一つ、私が大切だと考えている目的は、消費者視点から脱却するためです。

エントリーシートの添削や面接練習をしていて、とても多いと感じるのが「御社の製品が大好きだから」を前面に押し出した志望動機です。
これでは消費者の視点と変わりません

就活において会社が求めるのは消費者ではなく、新しい価値を生み出してくれる社員のはずです。
この会社のどのようなところに魅力を感じているのか、この会社でどのようなことを達成したいのかを伝えられるようになるには、会社を深掘りして情報を取ってくる企業研究が必要なのです。

企業研究はいつから始めるべき?

では企業研究はいつから始めるべきなのでしょうか?

早ければ早いほど良い、なかには大学1年からすべきなどという就活ブログもありますが、私はそうは思いません。
最も効率が良いのは、自己分析とセットで企業研究を行うことです。
自己分析を行うことで志望する業界や企業が決まることもあれば、企業研究を進めるなかでさらに深い自己分析ができるようになることもあるからです。

ただし、最低ラインとしてエントリー開始前には自己分析と企業研究のセットを完了させるイメージを持っておくと良いでしょう。

自己分析のおすすめ方法についてはこちらの記事からどうぞ。

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内定を引き寄せる企業研究のやり方

さて本題です。
研究職独自の企業研究のやり方を5つのステップで解説していきます。

  1. 基本情報でスクリーニング
  2. 統合レポートで経営課題や経営方針を把握する
  3. 特許や論文で技術動向を把握する
  4. 現行の製品やサービスを把握する
  5. 志望動機に落とし込む

以下では具体的な企業研究の例として、資生堂の企業研究を私なりに行ってみます。
食品メーカーでもよかったのですが、内部事情を多少は知っていてバイアスがかかりそうなので、あえて化粧品メーカーを選んでみました。

基本情報でスクリーニング

企業研究の5ステップとして最低限必要な要素を抽出しましたが、全てこなすにはそれなりの時間がかかります
そこで、まずは就職四季報や採用HPに記載されている基本情報をもとにスクリーニングをかけてみましょう。

就職四季報にはあらゆる企業の基本情報がまとめられているので、一冊持っておいても良いですね。

ここで必要な情報は以下のようなものでしょうか。

  • 給与
  • 福利厚生
  • 勤務地
  • 職務内容
  • 研究分野
  • 採用実績
  • 売り上げや利益
  • 求める人材

資生堂に関し、これらの情報をまとめるとこのようになります。

資生堂備考
給与博士了:284,450円
修士了:252,310円
大学卒:228,890円
就職四季報とHPの情報に乖離あり。ベースアップされた可能性が高い。
福利厚生■住宅関連手当の支給
■財形制度や自社株投資会制度
■健康診断
■慶弔見舞金制度
■健康保険組合
■カフェテリア制度
■自社商品割引購入
■企業年金制度や積立型総合福祉共済制度、他
■産前産後休暇、育児休業制度、育児時間制度、介護休業制度、介護時間制度 他
ポイントの範囲内で用意された福利厚生サービスから好きなものを選択できる仕組み
勤務地本社(東京銀座)または研究所(横浜、神戸)
職務内容基礎研究(皮膚生理メカニズムの解明、乳化技術の開発など)
製品開発(中味処方・容器・製品情報の開発)
品質保証・安全性保証
研究分野感触研究、脳科学・心理学研究、香り・匂い研究、塗布膜研究、素材開発、分析技術、皮膚科学、毛髪再生研究、D-アミノ酸研究、デジタルデバイス研究
採用実績2019年:154人 2020年:154人 2021年:65人 職種ごとの採用実績は不明
売り上と利益      売り上げ:9209億円(2020年) 純利益-117億円(2020年)
求める人材資生堂グループ全社員のワーキングプリンシプル「TRUST8」を体現することができる人TRUST8について
参考:資生堂R&D採用HP 就職四季報

これらの情報をもとに、興味を持てる企業かを判断しましょう。

個人的に勤務地がすごく田舎だったり、研究職とはいえ開発業務しかやっていない企業はこの時点で排除していました。

この段階はあくまでスクリーニングです。
時間が多くある方は、企業を絞らずに次のステップに進んでも良いでしょう。

統合レポートで経営課題や経営方針を把握する

スクリーニングが終わったら、次は統合レポートをみてみましょう。
統合レポートとはアニュアルレポートや年次報告書などとも呼ばる場合があり、主には投資家に向けた会社の経営状況や経営方針をまとめたレポートです。

会社の経営層が研究部門に期待することや投資方針を読み取ることができ、それに応じてどのような能力を持っている人を採用するかが変わってくることもあります。
企業が設定した課題に対して、自身の能力や強みをどのように活かせるかという視点で読み解くと良いですね。

では実際に資生堂の統合レポートを見てみましょう。

まず着目したのは中長期経営戦略です。

中期経営計画とは、企業が中期的に目指す、あるべき姿と現状とのギャップを埋めるための計画。明確な定義はないが、3~5年程度の中期を指すことが多い。

グロービス経営大学院

長期経営計画とは、経営ビジョンと現状のギャップを埋めるための計画。明確な定義はないが、5~10年程度の長期を指すことが多い。

グロービス経営大学院

中長期経営戦略によると、資生堂は「2030年にスキンビューティー領域における世界No.1の企業を目指します」と宣言しています。
これにより特にスキンケア製品の開発や皮膚科学の研究に力を入れていくことが予想されるので、皮膚科学やそれに類似する研究を行っている方の採用枠が増えそうです。

スキンビューティー領域の他にも、食生活や睡眠など身体の内側から働きかけて美を実現するインナービューティーという領域も新領域の研究と位置付け、力を入れていくとの記載があります。
従来の資生堂の製品やサービスにとらわれず、新領域の研究立案ができる研究者が求められていると推察できますね。

また、「継続して売上高比率で3%程度の研究開発費を投下」との情報もあり、毎年約300億円もの研究開発費が予算化されるようです。
他企業の研究開発費と比較してもかなり潤沢ですので、研究環境としては魅力的です。

中長期経営戦略の他に着目したのが、ブランドイノベーションの情報です。

ここではR&D部門の課題として、「強力な研究基盤を有するがあまり、R&D単独での進化が増え、研究成果をブランド価値向上に繋げられていなかった」と分析されています。
そのため、顧客の思考や価値観の変化などにもアンテナを張り、その動向をR&D活動に取り入れていくことが必要とも述べられています。
技術視点のプロダクトアウトから、市場や顧客視点のマーケットインに軸足を移しつつあると読み取れますね。

エントリーシートや面接における自身の研究紹介では、技術的な興味深さだけではなく社会や顧客にどのように還元できるのか、さらには資生堂のブランド価値向上にどのように繋がるのかという観点がより重視されそうです。

中長期経営戦略、ブランドイノベーションの他にも統合レポートには会社の現状分析や方針をメインにさまざまな情報が網羅されています。
統合レポートを読んでいる就活生はあまり多くなく、他の就活生と差がつくポイントですので読み込んで分析してみましょう。

論文や特許で技術動向を把握する

統合レポートにて研究部門に求められていることを大まかに把握できたら、次はより具体的に論文や特許を調査しましょう。
企業によっては投稿論文をまとめたHPを用意しているところもありますが、PubMedGoogle Scholarでも企業名を入れることで検索可能です。

おおよそ3年分を目安に調査してみると良いでしょう。
化粧品業界や食品業界では研究成果を求められるまでの期間が比較的短く、3年間で全く論文が出ていない分野であれば、その企業が研究を行っていないもしくはリソースを割いていない可能性が高いためです。

また、全ての論文に目を通す必要は全くなく、自身の興味のあるテーマや大学での研究で得た知見や技術を活かせそうな(アピールできそうな)論文に着目することがポイントです。

PubMedで「shiseido」と検索すると2018年以降126報の論文が出てきました。
研究内容に加え、どのような雑誌に投稿されているか、共同研究先はどこかなどの観点で調べてみると良いですね。

一方で、特許検索には慣れていない学生の方も多いのではないでしょうか。
企業における特許の立ち位置は論文よりも上で、強い特許を出願することはR&D部門の一つのゴールでもあります。

特許を検索する際に使いやすいのは、特許庁が管理するJ-PlatPatです。

特許・実用新案を選択し、検索欄に「資生堂」を入れ検索すると、簡単に洗い出せます。

論文と同じ理由でおおよそ3年分を目安に調査してみることをお勧めします。

しかし、慣れない分野の研究内容を英語論文や独特な書き回しの特許で把握するのはけっこう難しいところ。
そんな時は、企業のニュースリリースを見てみましょう。

資生堂のニュースリリースは技術・研究開発でフィルターをかけられます。

研究に関するニュースリリースであっても対象は一般消費者のため比較的わかりやすく、関連した論文情報も記載されているので、企業研究に向いていますね。

現行の製品やサービスを把握する

ここまで経営の観点や研究の観点から企業研究を行ってきましたが、メーカーを志望するのであれば、現行の製品やサービスもチェックしておきたいところです。
ただし、上市されている製品名やブランド名を丸暗記する必要は全くありません

ポイントはやりたい研究内容と現行の製品やサービスがあまりにもかけ離れていないかという点での確認です。
極端な例ですが、どんなに優れた研究であっても資生堂で宇宙航空分野の研究をすることは到底なさそうですよね。

どのような企業でも独自の強みがあり、それを活かした製品やサービスを構築しています。
研究の視点から新たな事業を作ることもありますが、それでも作り上げてきた企業独自の強みを活かすことは必ず考えます。

ですので、やりたい研究や自身の強みをどのように現行の製品やサービスに搭載するのかという切り口でも企業研究することをおすすめします。

志望動機に落とし込む

ここまでさまざまな情報をインプットしてきました。

しかし、インプットだけでは就活を勝ち抜いていくことはできません
企業の情報を集めるだけで満足せず、このままの勢いで志望動機に落とし込む作業をやりましょう。

とはいえ、まだ志望動機を完璧に仕上げる必要はありません

なぜこの企業に魅力を感じたのか、この企業にどのように貢献できるかなどの観点から志望動機の構成を考えてみましょう。
キーワードだけでも良いでしょう。

志望動機を含め、エントリーシートに使える型をこちらに置いておきます。

まとめ

研究職志望に特化した企業研究のやり方を解説してきました。

冒頭でもお伝えしましたが、企業研究は自己分析とセットです。
企業研究⇆自己分析を繰り返し行うことで、企業の理解、自分自身の理解がどちらも進みます。

ぜひ本記事を参考に企業研究を始めてみてください。

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